人口減少社会と「ワクワク」は成り立つのか

この年末、ひとつのニュースが全国、そして香川県で話題を呼びました。

50年県人口23・8%減 推計72万4120人 東かがわ半数以下(読売新聞)

これは5年に1回行われる総務省の国勢調査結果を元に、国立社会保障・人口問題研究所が出している「日本の地域別将来推計人口を元にしたニュースです。同推計結果によると、東かがわ市の2020年の国勢調査時の人口は28,279人で、30年後の人口推計は13,546人に半減。また、2020年から2050年の間に人口が半減する市区町村は約2割とのこと。ちなみにこの調査は国勢調査ごとに出されており、前回は2018年にも発表されていますが、この推計はほぼ当たります。下振れすることはありますが、上振れすることはほとんどありません。

また、日本全体と都道府県別としては、次のニュースが詳しいです。「人口減少の日本2050年にはどうなる 最新データからわかること(NHK NEWS WEB)

さて、この東かがわ市の推計人口を報じたニュースに対して、市民の皆様から「衝撃的だ!」「驚いた!」「びっくりした!」「これほどまでとは!」とお声がけを頂きます。ただ、お気持ちは理解しつつも、私はとくに驚いていません。なぜなら、すでにわかっていたことだから。

2018年推計と2023年推計、及び、先に公表されていた2020年国勢調査実測値を比べた下の図をご覧頂くと、以下のことがわかると思います。

〇2018年時点で2045年には1万5千人台になると推計されていた

〇2018年の2020年推計と2020年の実測値では、2020年実測値の方が少なく、推計よりも人口減少は早く進んでいる

このことから、30年の間に人口が半減し得ることは、比較的容易に想像できると思います。もちろん、この一方で人口が増えている自治体もあります。ただし、人口が増えている自治体の数は年々減っており、今回の推計では30年で人口増を果たせる自治体はほんの一握りです。

この社会状況における私の考えですが、少なくとも市長になる前から「東かがわ市の人口を増やします!」という言葉を使ったことはありません。むしろ「人口が減っていく中でも前向きなまち」「人は少なくなったけど、このまちが好き!という人を増やす」ということは言ってきました。「人口減少社会の中で『誰もが知っている、ワクワクする東かがわ市』を実現すること」に全てを費やしていますし、「人口や物が減っていて、ワクワクなんかできない」という固定概念を飛び越えたいと思っています。

ここで、考えたいのは「人口減少そのものが社会問題では無く、人口減少によって起こる社会課題が問題」ということです。例えば、「生徒数が少なくなる中で、子どもたちの人間関係作りも含めた教育をどう担保するか」「少なくなる市内の市場・消費量を市外で、どうカバーするか」「減らざるを得ない行政サービスをどうやって補完するか」とか。
もちろんこれらの社会課題は人口が増えれば解決するのですが、日本全体がすでに難しい状況です。

「上村は何をやっていたんだ!?」と言われてしまいそうですが、その点は1期4年間の実績をご覧ください。市政を進める中で、市外から人やお金を集めつつ、東かがわ市の認知を上げてきました。
また、20年、30年後に社会を担う子どもたちとの意見交換を行って政策に反映したり、そのときに社会を引っ張る立場になっている30代の市民の方々や職員にこれからの10年を示す「東かがわ市基本構想」をつくってもらいました。加えて、市内企業の人材・設備・不動産への投資を促す制度を定めつつ、自立的継続的な事業を生み出していく取り組みもや、ローカルスタートアップ支援も進め、東かがわ市で新しい挑戦や価値が生まれる環境を整えています。

その基本構想の中で示した大きな方針は以下の2点。

〇若い世代に評価されるまちづくり
〇人口減少に適応したまちづくり

所謂、攻めと守りで、前者は攻め、後者は守りと捉えています。こうすることで東かがわ市が持続可能なまちにしていきます。むしろ、他に無い。攻めは、子どもたちはもちろん子育て世代、そして若い世代全体を如何に推していけるか。守りは、人口減少スピードに合せて行政負担を如何に減らしていけるか。

この方針について、高齢者の皆様から「上村は若い人しか見てない」と言われることもあります。ただ、この2点を進めることで高齢者の皆様への行政サービスを維持したり、廃止や縮小を最小限にとどめようとしていることを、何とかご理解頂きたいです。

来年も集中して投資をしていく分野もある一方で、廃止や縮小・統合を検討せざるを得ない制度や施設の議論もしていきます。もちろん、今後の難しく厳しい議論は覚悟をしています。少し時間は頂きますが「このままいったらまちがどうなるか。回避するためにどうし得るか」を次年度以降にシミュレーションしていく予定です。

これからも人口の状況を見据えつつ、「誰もが知っている、ワクワクする東かがわ市」を実現させていきます。